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世界競歩チーム選手権(2018年) 50㎞競歩 勝因の解説と2020東京五輪展望
今回、世界競歩チーム選手権にて50㎞競歩が表彰台を独占し
圧倒的な強さを見せれたことの要因はなんなのか?
競歩のTV解説者としておなじみの(笑)、柳澤が解説したいと思います。
圧勝のような、今回の大会ですが実際はけっこう厳しい戦いでした。
それは1位から5位までのタイム差が1分以内、50㎞という距離を歩いて差が1分というのは
決して圧勝とは言えないタイム差です。
では、その厳しいタイム差でありながら勝ち切れた要因はなんでしょうか?
〇日本競歩の歴史
日本競歩は昔から、選手間での合同合宿が盛んに個人レベルでもおこなわれてきました
その背景には、マラソンというメジャー種目になんと競歩も並びたい!
という先人たちの熱い想いがありました。
選手間での合宿が盛んだったので、強くなるためのノウハウが選手間で惜しみなく共有され
その歴史が、選手達に脈々と受け継がれてきました。
そのため、50㎞競歩の経験が浅い選手でも、どんな練習をすれば良いか?が
荒井選手や谷井選手(世界陸上北京銅メダル)から、惜しみなく伝えられるので
丸尾選手や、勝木選手が自信を持って練習が出来る(トレーニングメニューに不安がない)
という土壌があります。
〇自衛隊を中心とした50㎞の強化体制
50㎞競歩は当然ですが、練習時間が長いです。
とても就職をして空き時間にトレーニングをして強くなれる、というものではありません。
実業団もまだまだ競歩の選手を獲得するチームは少ないです。
そんな中、いち早く自衛隊が選手を獲得し、強化をしてくれました。
事実、日本はこの世界競歩チーム選手権を含め7個のメダルを国際大会で獲得しましたが
その中で5つは自衛隊の選手が獲得しています。(荒井選手3つ、谷井選手1つ、勝木選手1つ)
環境が整った中で、今村強化部長は50㎞競歩選手だったこともあり
トレーニングのノウハウと、イタリアでのコーチ留学で得た科学的なトレーニング導入(乳酸・心拍数を基にした)など
選手が効果的にレベルアップできる環境が50㎞競歩にはあります。
〇1月のオーストラリア合宿
50㎞チームは今回、初めて1月にオーストラリア合宿を行いました。
そこで他国との選手とトレーニングが出来、1月ですが南半球で真夏となるオーストラリアで
非常に良い合宿が出来ました。
荒井選手はリオ五輪で死闘を演じたダンフィー選手(カナダ)とトレーニングができ
その二人と一緒にトレーニングが出来た他の日本選手も良い刺激を得たと思います。
そして、今回の結果の最大要因は
〇50㎞競歩の精神的支柱としての荒井選手・谷井選手の存在
昨年の世界陸上で、荒井選手と小林選手が銀銅メダルを獲得しました。
そのレースを見ていた選手は、「荒井選手と同じレースさえすればメダルに手が届く」
と思え、荒井選手もそれを拒まず日本チームとして、惜しみなく一緒にレースをします。
その礎になったのが、日本人選手初メダルとなった谷井選手と荒井選手のレースでしょう。
このときは、荒井選手と谷井選手が一緒に歩くことで、谷井選手の銅メダル獲得につながりました。
この経験が、荒井選手とって「メダルを獲ることの献身」につながったのでは?
っと思います。
そして、谷井選手が不在の時は、50㎞競歩の精神的支柱として大きな役割を果たしています。
このことが、今回の表彰台独占の礎となったといっても過言ではないと思います。
ただ、手放しに喜べない要因もあります。
それは、やはり今回は相手関係(つまり他国の選手)が弱かった
強い選手が出場しなかったというのは確実にあります。
ドーピングでロシアの選手の出場も無く
スロバキアのトス選手(世界陸上北京 金・リオ五輪 金)
圧倒的な強さで昨年、世界陸上ロンドン50㎞競歩を勝ったディニズ選手(フランス)
五輪・世界陸上でほとんどメダルを逃さないオーストラリアのタレント選手(ロンドン五輪 金)
強い選手たちが出場していませんでした。
そして、トス選手以外は2020東京五輪に向けて出場の意思を示しています。
彼らが揃ってこそ、本当の50㎞競歩の戦いが始まるのです。
しかし、日本人レースウォーカーの英知と団結力で、彼らを迎え撃つ準備を
我々はしなければいけないのです。